"rainy"








「雨……か……」


深い溜息と共に洩れたような声。
さっきまで晴れていたのに、部活が終わった途端、突如雨が降り出したのだ。
下駄箱のあたりで立ち往生。



「ったく……やんなるよなぁ……俺、今日傘持ってきてないのに……」


深司のイライラが溜まってきたとき。






「あ、しんじー♪今から帰るのか?」


くるりと後ろを振り向くと、そこには神尾がいた。


「……見れば分かるだろ…?……でもこの雨……やんなるよなぁ……」

髪ぬれちゃうし…。
深司がぽそっと呟いて、ボヤキモードに突入しようとした時、
神尾が近寄ってきて、小さなビニール傘を差し出した。


それにはオレンジと黄色の水玉模様が入っていて、明らかに神尾の物ではない。




…………



分かってはいたが、深司は聞いてみた。とりあえず。

「神尾……分かってはいたけど……趣味悪いよね……」


「ばっか、違うよー。これ俺のじゃないもん。」
趣味が悪いと言われて少しショックを受けたようだ。
ふてくされたような顔になる。


やっぱり……
そう思って深司は微笑した。
どうやら、自分は神尾のことを大分分かっているらしい。



「そこに置いてあったから、ちょっと拝借したんだよ♪」


「……それって……いけないんじゃ……」


「いーんだよ♪これで一緒に帰ろう?」

満面の笑み。



……もう………可愛い顔してさ……



深司は水玉の傘の持ち主に少しだけ感謝しながら
神尾が手招きする傘の中へと入った。



















「それにしても、俺がこんな女っぽい傘持ってると思ったのかよ。」

不思議そうな表情で神尾が尋ねる。

「ま、神尾のじゃないってわかってたけどね……」

それを聞いて益々不思議そうな顔になる。

「わかってたならどうしてあんなこと言ったんだよ?」

深司はうっすらと笑って呟く。



「……………………神尾がいじめたかっただけ……」




「はぁ!?なんだよー酷いぜ深司ー…」

神尾が脱力して呟く。


そんな神尾を横目で見ながら、深司はまだうっすらと笑っていた。

(だって……しゅんとした神尾、凄く可愛いから……)


「どうしたんだよ…?」

喋らなくなった深司が気になったのか、神尾が顔を上げる。

「なんでもないよ…」






そうしているうちに、雨は徐々に強くなっていた。



























「…………神尾……肩、濡れてない……?」


そう言って、傘を少し神尾の方に傾ける。

「あ、サンキュ深司♪」



(それにしても……男二人で相合傘……か。)

(神尾じゃなかったら、本気で嫌だな……それなら俺、多分濡れて帰るだろうな……)

(特に石田とかとだったら……確実に濡れて帰る……アイツでか過ぎだし……)


さり気なく失礼な事を考えながら、神尾の方を見ていた。



ふ、と神尾が何かに気付く。



「っていうか深司も濡れてるじゃんっ!!」


言われたので自分の肩(神尾がいない方)を見てみたらびっしょり濡れていた。
実感したとたん、布が張り付くような嫌な感覚が広がる。

「あー……いいよ、もう……」
半ば諦めたように呟いた。

「深司も入らないとダメ!!ほら、こうして〜」
そう言いながら傘を深司の方に傾ける。

「バカじゃないの、神尾……そうしたら神尾が濡れるでしょ……?」
そう言って傘を神尾の方に傾ける。

「でも、深司だって濡れるだろー?」
そう言って傘を深司の方に傾ける。



神尾が、深司が……そんな無意味な争いが暫し続いた。


そして……


神尾がひらめいたように言った。
「じゃぁ、傘閉じて二人で濡れようぜー?」

にっこり微笑んで傘をバッと閉じる。




ザ――――――――――……





「これでお互い様だな♪」
自分の提案に満足したのか、神尾はにこにこしながら歩き出す。

「深司ー帰るぜ〜?」

くるりと後ろを振り向くと、深司は止まっていた。

「深司?」





…………はぁ……


深司は深く、深く溜息をつくと、ゆっくりと神尾に近づいてきて、傘を取った。

バッ…と水玉の傘を広げる。



「じゃ、俺が使う…………。……ったく……神尾、馬鹿なんだから……」





「……えぇっ!!!!?ちょ……ちょっと深司!!!?」


「はー……リズムっ子は困ったもんだなぁ……」

ブツブツ呟きながら深司は歩き出した。
神尾はずぶ濡れで後に続く。


「深司のバカ――!!俺も入れてってば!!」

神尾が涙目で訴える。





その涙に目がとまった。


……そんな顔……俺にしかしないでよ……?
神尾の全ては…俺のものなんだから…。


口には出さず、顔に微笑を浮かべる。
その様子を、馬鹿にされたととったのか、神尾の目に更に浮かぶ涙。













「深司のいじわる―――――!!!!」















その後……
濡れた神尾は深司の家でお風呂を頂き(深司に連れ込まれたんだけれど)、心身ともに暖まったのだった。


end



え……えっと……;
最近雨が多くてね……?ゆりあんと色々悶え話してたら、こんな話になってね……?
神尾は譲り合いよりも、一緒に濡れる事をとって、深司が呆れる……っていう(苦笑)
アキラたんが馬鹿でごめん……!!!でも好き!!伊武神好きなのっ!!!!(大告白)

2003.07.14








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